irregular reports
いびつな報告群と希望の兆し
2020年は、⾒通しや計画をたてられない不測の⽇々が続いています。誰もが⼿探りで、現在を過ごしているのではないでしょうか。オリンピックの延期をはじめ、予定や計画の変更も多数ありました。ところで芸術作品には、鋭敏な感性で時代を捉え描きだす芸術家による世相の「記録」という側面もあるで]しょう。芸術家は、社会に対してときに鋭い批評性を伴う疑問をなげかけ、ときに状況を肯定し奨励します。⾏政機関などが残す(公)⽂書(Document)がいわゆる⼤⽂字の記録だとしたら、芸術家による作品は、フィクションを伴う創造的で抽象的でちょっといびつな報告(irregular report)と⾔ってもよいかもしれません。
本展は、「いま、ここ」という状況下で若い芸術家が制作した作品を発表する場です。17組の作家たちがそれぞれの作品を通じて、この数奇な⼀年を表現する、時代を映す鏡となる「報告」の集合でもあります。
2020年は歴史に残る⼀年となるでしょう。悲惨なことも、よいこともありますが、これから芽吹く作家たちの表現が現在を捉えるいびつな報告群であるとともに、未来への希望を⼿繰り寄せる予兆となることを期待しています。
ディレクター・服部浩之
(インディペンデント・キュレーター、京都芸術大学芸術学部客員教授、秋田公立美術大学大学院准教授)
東京都美術館 本展
2021年2月23日(火)~26日(金)9:30~17:30(最終入場17:00まで)
於・東京都美術館(1階 第2・第3展示室)
東京都台東区上野公園8-36